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天使のハンマーって? [folksongs]

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https://youtu.be/8of3uhG1tCI

キングストン・トリオがフォークブームの起爆剤の役割を果たしたとすれば、そのブームを爆発的に広め、とりわけ女性のフォークファンを増殖させたという意味で、日本のフォーク、さらにいえばポップスに多大な影響を与えたのがピーター・ポール・アンド・マリー(PPM)でしょう。
その曲をからだで感じ、絶叫でレスポンスしたのがビートルズファンならば、その曲をハートで感じ、つつましく口ずさんでみたのがPPMファンではなかったでしょうか、なんて。

ニューヨーカーのピーター・ヤーロウ、ボルティモア出身のノエル・ポール・ストゥーキー、それにケンタッキー州ルイヴィル出身のマリー・トラヴァースの3人が61年に結成し、翌年より多くのヒット曲をリリースした。とりわけ時代を反映したベトナム戦争へのプロテストソングをいくつもうたい、多くのファンに支持されたことが特筆されます。

実際、3人ともリベラルな考え方で、とりわけ穏やかな顔のピーターは政治活動、反戦活動に直接かかわった。反戦歌は彼の影響が大きい。ポールは信仰心が篤く、アルバムには「ソーリン」や「ヨルダン河」といった聖歌がいくつもみられます。マリーは両親がジャーナリストでその影響からか、やはりリベラルな思考がつよく、デビュー前はピート・シーガーのバックコーラスの一員だったこともあるとか。

https://youtu.be/P5Yx8cg6Gpg

レモン・トゥリーは1961年の彼らのデビュー曲。
父親が子供に自分の失恋談をレモンの木にたとえてさとす。「レモンの木は美しく、花は香ばしい。でもその酸っぱい実は食べられない」と。50年代にウィル・ホルトがブラジルの民謡をヒントにつくったといわれます。
トリニ・ロペスのカヴァーも知られています。トリニ・ロペスはそのルールであるラテンばかりでなく、カントリーやフォークもうたってしまう不思議なシンガーでした。

https://youtu.be/Xu-DWUngjhk

いわずと知れたボブ・ディランの作品。
邦題「くよくよするなよ」は名訳です。
早い話、ハートブレイクソングで、愛してくれなかった彼女に対して、また去っていかなければならない自分に対して、「しょうがないよ、でもこれでいいんだよ」と強がり、慰めています。

個人的にも、はじめてこの曲を聴いたのはディランではなくPPMで。ポールのスリーフィンガーがとても魅力的でした。アメリカでもヒットしたのはPPMが先だそうです。

この歌はヒットしたことももちろんですが、多くの後輩ミュージシャンたちに影響を及ぼした歌ではないでしょうか。それほどカヴァーするフォーキーやポップシンガー、さらにはカントリーシンガーが多い。日本のフォーキーたち、とりわけ「ディラン党」には「風に吹かれて」以上に影響を与えた歌ではないでしょうか。友部正人をはじめ。

https://youtu.be/zVQAhhlq798

悲しみのジェットプレインは1967年にアルバムに収録。2年後にシングルカットしたところビルボードのポップチャート1位となった歌。数あるPPMのフェヴァリットソングのなかでも、いちばん好きな歌です。

元々はジョン・デンバーの作品で、はじめはタイトルも歌詞に出てくる[Baby, I hate to go](恋人よ、行きたくないんだ)だった。PPMがこの歌をシングルカットした同時期、ジョンも新タイトル「悲しみのジェットプレイン」として再リリースしたそうです。

空港での別れをうたった歌で、去っていくのが男。残されるのが女。のようです。
「僕を待っていると言ってくれ」「もう一度抱きしめて、キスしてくれ」「どこへ行こうが、君のことは忘れない」「帰ってくるときは、エンゲージリングを捧げるよ」といまだ相思相愛のふたり。でも「いつ帰ってこれるかわからない」とも。
いったい彼は愛する恋人を残してどこへ行こうというのでしょうか。
もちろん旅行ではないし、仕事での出張とも考えられない。もしかしたら、兵役につくのかも。さらには、その後ヴェトナムへ赴くことになっているのかもしれません。
そうならば、およそ日本では考えられない別離だともいえます。

https://youtu.be/GIbzPNTxSHY

1962年の「虹と共に消えた恋」。この歌も日本でヒットしました。哀調を帯びたマイナーチューンで戦争へいった恋人を嘆き悲しむ歌詞が、平和ニッポンの若者たちにも共感をよぶことに。

この歌は1860年代といいますから南北戦争期にうたわれていたトラディショナルソング「ジョニーは行ったの兵隊に」がベースになっています。
さらにいえばこの歌のルーツはアイルランドの伝承歌「シューラ・ルゥ」Siúil A Rúnだといわれています。内容は恋人や夫を戦地に送り出してしまった女性の悲しみや淋しさを歌ったもので、シューラ・ルゥとはゲール語(アイルランドの言葉)で旅立つ人の無事を祈る言葉だとか。

ほかにも「500マイル」、「悲惨な戦争」、「勝利を我らに」、「わが祖国」、「戦争は嫌だ」、「風に吹かれて」、そしてピート・シーガーの「花はどこへ行った」、「天使のハンマー(ハンマーソング)」など聴きたい曲はいくつもありますが、キリがありません。

マリー・トラヴァースが亡くなってもう10年以上が経ってしまいました。毎日のようにPPMを聴いていた時代からなら半世紀以上が過ぎました。J-POPやK-POPに夢中になっている音楽好きの若者のどれくらいがPPMを、またその歌を知っているでしょうか。
ポップソングの宿命といえばそれまでですが。

最後に「日本のPPM」の一曲を。
六文銭を結成する前の小室等が「レモン・トゥリー」に衝撃を受けて1963年に結成したのが「PPMフォロワーズ」。その一曲を。

https://youtu.be/c1QkvsfgytQ



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