秋の桜だけどコスモスではない [秋]
今年も暑かったし、颱風の多いいやな夏でした。
やっとこさっとこ秋が来て、ようやく先週あたりから金木犀が匂ってまいりました。
駅へ続く広い公園を通るとき、どこからか香しきかおりが。
あのオレンジの花と小さな深緑の枝葉でたたずむ金木犀の樹はいずこ、などと捜すような野暮なことはいたしません。
あ、今年もいつもどおり咲いたんだ…。とサラッとやりすごすのが粋ってもの。
のはずでしたが、本日その居場所を見つけてしまいました。
年のころなら三十凸凹といった立ち姿の美しい女性が目の端に飛び込んでまいりまして、悲しい男のサガといいますか、歩みとは裏腹につい見とれてしまいました。
で、その美女はなにやら両手を動かしております。何を? と思って完全のロックオンすると木の前に立ち、両掌で自分の顔へ風を送っておりました。
あっ、そうか。そういうことか。
美女の目の前の樹にはかの小さなオレンジの花が咲いておりました。
あまりの「直接行動」に驚きましたが、かの美女もきっと秋の芳香を待ちわびていたんだな、ということで納得いたしました。
どれほどの美女かですって? 残念ながら後姿しか見ておりませんので。
金木犀の匂いがしてくると脳内蓄音機で再生される季節外れの歌があります。
https://youtu.be/fZqi0EoMTyM
40年余り前の話。はじめての独り暮らしのアパートで、はじめての秋に、生まれてはじめてかぐ香りに、「こりゃ、何のにおいだ?」と数日のあいだ心穏やかならぬものがありました。
顧みれば、己の人生の半ばを決めてしまった郊外での独り暮らし。そのアパートの裏を小さな川が流れておりました。