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どこかで鳥が啼いている [screen music]

川津祐介.jpg

またも訃報です。

先が短くなると、どうも訃報が気になる。
俳優の川津祐介さんがお亡くなりになりました。命日は2月26日で86歳だったそうで、十分生きられたといっていいのではないでしょうか。

しばらく前からテレビではみかけませんでしたが、いろいろな経験、体験をされてなにかスピリチュアルの世界に傾倒されていたようです。、キリっとした顔つきとチャキチャキなセリフ回しがここちよい俳優でした。

テレビの「ザ・ガードマン」で文字どおり茶の間の人気者(死語かなぁ)になったそうですが、番組は知っていても実際に見た記憶がないので、ガードマン姿の川津さんのことも覚えておりません。ニュースで知ったのですが、てっきり主人公は丹波哲郎だとおもっていました。実際は宇津井健だそうです。なにかほかの番組と取り違えていたようです。

川津祐介(以下敬称略で書きます)の映画は、ウェブサイトで確認するとかなり観ておりますが、印象的だったのは2作品。

まずは鈴木清順の「けんかえれじい」。
昭和41年の公開といいますから、リアルタイムではなくのちに名画座で観たのだと思います。その後何度か見て、映画好きの友人とよく語り合った映画です。
前半は岡山、そして後半は学校を追われての会津若松が舞台。そこで男を磨き「喧嘩の修業」をする旧制中学生・南部麒六(キロク)の「青春記」でした。いつの世も変わらぬ若者のすべてが描かれていた映画でした。

主人公のキロクに若き日の高橋英樹が。そして岡山時代キロクに喧嘩の仕方を伝授するのが川津祐介扮する先輩のスッポン。袴姿でローラースケートで闘ったり、パチンコ、釘バットなどの武器をつくったり、多勢に無勢でも知恵と度胸で勝利の凱歌をあげる頼もしい「兄貴」を演じておりました。

女優陣ではキロク憧れのマドンナ・道子に浅野順子。カフェの女給に松尾嘉代が出ておりました。浅野順子はNHKテレビドラマの「次郎物語」で見とれていたお姉さん。のちに大橋巨泉夫人に。松尾嘉代は「紅の流れ星」でもおなじみのこれまたネクストドアお姉さんで、当時、仲間内でもファンが多かった。
北一輝が出てきたり、2・26事件の号外を見て居てもたってもいられず夜汽車で東京へ向かうキロクの姿で終る(多分)という思わせぶりなラストでした。
川津さんの命日が2・26というのも何かの縁でしょうか。

映画の中では「昭和維新の歌」が流れていたような気もしますが、あまり好きではありませんので、もうひとつ旧制中学生たちがうたっていたという歌で、映画の中でもうたわれていた歌を。といいましたが残念ながらYOU-TUBEに元歌がないのでアレンジされたこの歌で。ハナ肇とクレイジーキャッツも別アレンジでうたっておりました。P.D.で「東京流れ者」の元歌でもあります。

https://youtu.be/hIfOYrjXcxw

もうひとつの川津祐介の映画は「けんかえれじい」よりさらに昔の昭和34年の木下恵介作品。もちろんこれまた名画座で観た映画です。

偶然ですがやはり会津若松を舞台にした作品。
幼なじみの五人の青年と彼らをとりまく「大人」たちの青春群像劇。とにかく監督好みのいまでいうイケメンを揃えた、当時の若い女性には堪らない映画。といっても単なるアイドル映画ではなく、友情と誤解の入り混じったほろ苦いドラマはたしかキネ旬のベスト10にも名を連ねたはずです。
今のマンガでいえばBLものとしても観れる映画。ゲイからの支持も高いとか。

好色五人男ではなく五人の色男(と当時は言った)には石濱朗、川津祐介、山本豊三、津川雅彦、小坂一也が扮し、川津は唯一東京へ出たエリートで、たしか映画は彼が会津に帰ってくるところから始まります。これも多分になってしまうのですが、川津にはどこかカゲがあり、その理由が東京で何か罪を犯して逃げてきたから、ということがのちのちわかってくる。そんな暗い秘密をかかえた若者をみごとに演じておりました。

「友情物語」のサイドストーリーとして大人の恋物語もあってやはり当時のイケメン、美女の佐田啓二と有馬稲子が演じていました。「東京暮色」からのファンであった有馬稲子の舞う白虎隊ではスクリーンに見とれておりました。

それはともかく、この映画が印象に残っているもうひとつの理由が主題歌。
木下恵介の弟・木下忠司の作詞作曲で、当時の人気歌手若山彰がうたった同名主題歌が耳に残り、やがて脳内アーカイブスへと記録されていきました。

https://youtu.be/DIjd_a7Lbm4

歌も映画もその2年前の「喜びも悲しみも幾年月」(こちらも木下忠司作曲。作詞は木下恵介)ほどヒットしませんでしたが、旋律も詞も木下メロディーで日本人の原風景をかんじさせる(勝手なこと言ってます)歌でした。
好きな歌なのですが、カラオケでうたったことがありません。そこそこ人気のある歌だと思うのですがなぜかカラオケにないのです。「隠れた人気」くらいじゃカラオケに入れてくれないのかな。やはり木下メロディーの映画主題歌「ここは静かなり」もありませんし。

最後はグチになりましたが、川津祐介さんお疲れさまでした。熱烈なファンではありませんでしたが、あなのた魅力を脳裏に描いているファンがわたしを含め少なからずおりましたよ。

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エイメン [screen music]

夜の大捜査線②1967.jpg

正月そうそうの訃報でした。
アメリカの俳優であり監督であったシドニー・ポワチエが亡くなりました。94歳だといいますから、大往生ですね。

びっくりしたのは元の奥さんがジョアンナ・シムカスだったということ。知りませんでした。「冒険者たち」でアラン・ドロンとリノ・ベンチュラに愛されるいい女で、あのスレンダーな容姿、あの大海原のドラマ、あのスクリーンミュージックとともに忘れられない女優でしたが、まさかポワチエの奥さんだったとは。

それはともかく、ポワチエはわたしが洋画に目ざめた1960年代なかごろ、とても印象に残った男優でした。
当時、当然こどもだったわたしはロードショーなど観る小遣いはなく、いつも駅前にあった映画館に通っていました。
ロードショーが終了したあとの「二番館」ならまだいいほうで「三番館」「四番館」なんてことも。だいたい小中学生は2本立てか3本立てで100円前後じゃなかったかなぁ。
当時の100円は子どもにとって大金で、中学で月の小遣いが300円くらい?。

近所の川のほとりにあった映画館など邦・洋とりまぜた5本立てで50円だった。そのかわり、フィルムがブツブツに切られていて。通常1本1時間半の映画が5本で3時間足らずで終っていました。まさにファスト映画の魁。さらに館内は個別の椅子などなく、よくあった森永や明治といった製菓会社のパイプでつくられた長椅子がいくつも置いてあるだけ。したはもちりん板敷などでなくまったくの地べた。だから草が生えていたり、穴ぼこがあったり。とにかくスゴイ映画館でした。

脱線してしまいました。
ポワチエを初めて見たのは「夜の大捜査線」。

https://youtu.be/HP3arfW6uvw

これも忘れられない名作です。アカデミーも作品賞と主演男優賞を獲っています。
もちろん主演はポワチエなのですが、アカデミーを捕ったのはロッド・スタイガー(彼もいい役者でした。シドニー・ルメットの「質屋」での実は心に癒しきれない傷をおっている因業な主人はみごとでした。モノクロでね)

「夜の大捜査線」はニューヨークだったか都会の辣腕刑事(ポワチエ)が南部ミシシッピイで列車の乗り換えで降りてくるところから始まるサスペンスドラマで。黒人差別がいまよりさらにヒドかったアメリカ、それも南部で黒人刑事が殺人事件の捜査をしなくてはならない羽目になっていくというありえない話(これが映画)。

捜査を指揮するのがこの街の警察署長(ロッド・スタイガー)で、当然の如く黒人蔑視と偏見のかたまり。
犯人はかんたんに捕まるが実はそれが冤罪。それをポワチエが暴き、真犯人に迫っていくというハラハラドキドキ。
それよりも惹きつけられるのがポワチエとスタイガーのやりとり。

黒人の能力など信ぜず、ポワチエの有能ぶりにイライラ反発する所長も共に捜査を続けていくうちに苦々しくおもいながらもその手腕を認めざるをえなくなっていきます。
そして真犯人はみごと逮捕され一件落着。

ラストシーンは。ファーストシーン同様、駅。
図らずも長逗留になってしまったポワチエが改めて乗り換えのために駅で列車を待っているところ。そこに仕事中の所長が何気ない感じでフラッと現れる。そして何気ない感じで別れを告げる。微笑むポワチエに対して、スタイガーは「あんたにゃ脱帽だ」という顔をしていた。

多分こんな映画でした。たしかにロッド・スタイガーの演技はアカデミー賞ものでしたが、ポワチエの差別の中で自分の仕事を妥協せずに続けていくという刑事の演技も捨てがたいものでした。
勘ぐれば、ポワチエはその4年前に「野のユリ」でアカデミー主演男優賞を受賞しているので、短期間で同じ黒人に2度もアカデミーを与えるのは……という配慮があったのではないでしょうか。改めて考えても、南部でヒーローになる黒人より、南部でリベラルな小権力者の方が左にも右にもウケがよかったのでしょうね。少なくとも当時のアメリカでは。

2度目に見たのがその「野のユリ」(1963年)で当時でもたまにあった白黒映画でしたが、これまた素晴らしいストーリーでした。

https://youtu.be/rn6w255CGkk

60年代前半、クルマで旅をする青年(ポワチエ)が、砂漠の中のシスターばかりの教会に止めてもらうことになり、その成り行きでチャペルを建てる羽目になるというハートウォーミングなドラマ。

50年代からビートニクの影響で、ケルアックの小説「路上」を真似て自分探しの旅に出る若者が少なくなかった。ポワチエ扮する青年もそんなひとり。
「夜の大捜査線」もそうですが、この役のポワチエにもインテリジェンスを感じました。それまで見た映画の中の黒人には感じられないものでした。
その後見た黒人男性と白人女性の結婚というシリアスなテーマを当時としてはいささかファンタジックに描いた「招かれざる客」(頑固おやじのスペンサー・トレイシーがよかった)でもポワチエには知性と品性がありました。
多分、それまでの映画の製作側が黒人は無教養な人間という間違った描き方をしてきたためなのでしょう。

そういう意味でもポワチエは、黒人としてメジャーリーグを変えたジャッキー・ロビンソンに匹敵する存在でした。彼がつくった「道」をデンゼル・ワシントンもエディ・マフィーもウィル・スミスも歩いていくことになるのですから。

主題歌のゴスペルの「エイメン」の作詞・作曲は、出演していた5人のシスターのひとり、エリザベス役のパメラ・ブランチによるものだそうです。
この歌も、スクリーンミュージックがもっと輝いていた当時、ラジオからよく流れておりました。ヒットパレードでも上位に入っていました。

もうひとつ彼が出演した映画で音楽が印象的だったのが「暴力教室」でつかわれたロケンロー。1955年、デビュー3作目で、もちろん主役ではありません。

https://youtu.be/wpbULZ59seg

ポワチエが演じるのは荒れる高校生のひとりでしたが、黒人ということで白人の級友たちとは一線を画して、学校が終ると自動車修理か何かのアルバイトをしていて、どこか硬派の印象がありました。でもハイスクールに通うにはややトウがたっていましたね。遅れてきた高校生という設定だったのかな。とにかくクールで目立っていました。やはりどこかインテリジェンスがこぼれているような役でした。

それから12年、怒れる高校生はなんと先生になります。やっぱりね。それも白人ばかりのハイスクールへやってくるという、当時ではありえない話(だから映画なんです。だからファンタジーなんです)。

https://youtu.be/EV1qmmMwc9M

「いつも心に太陽を」は「黒一点」ながら信念をもって生徒たちに向きあう熱血先生のストーリー。こちらも生徒やその保護者、ほかの先生からの嫌がらせを受け、一度は自信をなくし学校を去る意志をかためますが、多くの生徒たちに引き止められ、もう一度教壇に立つ決心をするという学園ハッピードラマを絵に描いたような感動作品でした。
生徒役で出ていたルルがうたった主題歌はビルボードナンバーワンに。

1967年の作品で、この年は「夜の大捜査線」、「招かれざる客」も公開されており、ポワチエが最も充実していた最良の年だったのではないでしょうか。

オマケは「野のユリ」のさすらいの青年のヒントで思い浮かんだカントリーの一曲を。

https://youtu.be/0GfYV3db0aM

近くの川沿いに住み着いた黒人のホーボー・なまずのジョン。母さんはダメだと言うけれど子供だった僕は何となく彼が気になって着いて行った。彼は奴隷時代のことなどいろいろな話を聞かせてくれた。という子供のころの思い出をうたった「キャット・フィシュ・ジョン」Carfish John 。彼もまた語る言葉をもったインテリだったのでしょう。

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1964年10月10日の空 [screen music]

夏の雲.jpg

現在テレビでオリンピックの開会式を放映しております。

用事をしながらチラチラ見ております。
無観客の競技場。今日は大谷も無安打だったので気持ちが盛り上がりません。そのせいだけではありませんけど。

今日も暑い一日でした。
きょういちばんのウレシかったことは真っ青の空に浮かんだというよりは、空を占領した巨大な夏雲の白さ。あんな真っ白な雲を見たのは久しぶり。しばらく眺めておりました。そういえば、1964年の東京オリンピックの日も晴れわたった青空でした。

東京上空をブルーインパルスが飛び、五輪の輪を描いていたと知ったのは、帰宅してみたニュースで。もしかしたら、ブルーインパルスの霊力がわたしの気持ちに突き刺さり、空を見上げさせたのかもしれません。なんて。

今日はブログを書くつもりはなかったのですが。
まさか、開会式に刺激されて♪オリンピックの顔と顔 なんて三波春夫を聴いてみたくなったわけではなく、前回のブログで60年代のスクリーンミュージックが懐かしくなり、YOU-TUBEで探して見たわけです。

時間がありませんのでふたつ聴いてみたいと思います。

まずは、昨日の「誘惑」の作曲者らしいテオドラキスの一曲を。
映画としてはアンソニー・クィーンの「その男ゾルバ」やキャンディス・バーゲンの「魚が出てきた日も良かったけれど、音楽としてはやっぱりイヴ・モンタンやジャック・ペラン、トランティニヤンが出たコスタ・ガブラス監督の「Z」ですね。やっぱりギリシア映画で実際にあった民主主義に対する国家テロ事件の感動的かつ悲劇的結末を描いておりました。

https://youtu.be/2S-t_gDPKqg

次にして最後は「誘惑」同様、映画は観なかったけれどサントラ盤を買ってしまったという1曲。

https://youtu.be/_FlZDX3mLN0

イギリス映画で、007を筆頭にスパイ映画がトレンドだった60年代に公開された作品。イギリスの人気小説の映画化らしいのですが、そんなことよりとにかく音楽が好きで何度も聴いていました。いまでも擦れ減ったレコードはジャケットともども段ボール箱に放り込んであります。
観てもいないのにナンなのですが、監督は「ゴールド・フィンガー」をはじめ何本もの007シリーズをとったガイ・ハミルトン。主演はその後「殺しのドレス」(ブライアン・デ・パルマ監督)や「サイダーハウス・ルール」でその演技が素晴らしかったマイケル・ケイン。いい役者でした。
YOU-TUBEの画像は映画とは無関係です。わたしの持っているレコードと同じ音源がこれだけでしたので。

おまけはくどいですが、「Zのテーマ」をもう一度。
「ゴールド・フィンガー」のシャーリー・バッシーがカヴァーしておりますので、歌付きヴァージョンで。これもYOU-TUBEの画像は「Z」ともシャーリー・バッシーとも関係ありません。

https://youtu.be/mvC6zRXwzfQ

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