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職務質問 [on the road]

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残暑のようです。このウンザリ感がないと夏は終わらず、秋はやってきません。

駅へ向かって歩いていると、工事現場のそばで怒鳴り声が聞こえました。昨今耳鳴りと聞こえにくさの二重苦でその内容はよくわかりませんでしたが、怒声の方へ視線を向けると、警察官ふたりとリュックを背負った60代前後の男が対峙しておりました。男の後にはその奥さんとおぼしき同年代の女性が間に入って止めるでもなく、なぜか自身のバッグの中をかき回している。

おそらく、 夫婦が散歩か何かをしているとき警察官に呼び止められたのでしょう。しかし見た目は夫婦ともごくふつうの人々(?)という風体なのですが、警官はどんな理由で男を呼び止めたのでしょうか。ちょっと気になったのは男がいわゆる「あごマスク」をしていたこと。
しかし、屋外で、それもさほど混雑しているようにはみえない路上で、マスクをずらしていたからといって呼び止めるかなぁ。
ちなみにふたりの警察官はもちろんしっかりマスクをしており、マスクをずらした男に怒鳴られているのだから飛沫を考えたら堪ったものではない。

立ち止まって成り行きを見るのはいささか憚られるので、わたしは彼らの横をシラーッと通り過ぎて駅へ向かいました。
そして10mあまり遠ざかったところで再び怒声が。反射的に振り返ってしまいましたが、そのとき目に入った光景に思わずニヤけてしまいました。
なんとなんと、怒鳴っていたのは警察官だったのです。それも怒りがおさまらないのか、何度も何度もかの男を怒鳴りつけているのです。

そのあと、結末を知りたい気持ちもありましたが、ほぼ予想はつくので駅へ。もちろんどうなったのかはわかりませんが、警察官vs中年男の勝負は、わたしの心のなかではイーブン。
警官を怒鳴りつけるという光景はそれほど珍しくはありません。血の気の多い若者や酔っぱらい、半袖からこれみよがしに倶利伽羅紋々をご披露されているお兄さんなどなどで。でもそういうケースのほとんどは、相手が手を出さない限り警察官は常に冷静です。つまり警察官の「勝ち」。そう教育されているのです。

それがあの警察官のすさまじいキレ方はめずらしい。よほど我慢のならないことを言われたのでしょう。警察官も人の子、と言ってあげたいけど、やっぱりダメ。我慢しなきゃ。辛いだろうけど、それも仕事だと思わなくては。周囲の人間はわかっています。警察官は絶対に手を出さない、とわかっていて怒鳴りつける男がわるいのだと。

警察官がなんで男を呼び止めたのか、男が何を言われてキレたのか、また警察官が説得中になにを言われて逆ギレしたのか。まるでわかりませんが、ここ数日警察官の姿が目立っていました。なにかあったのでしょうか。

昔ほど多くはありませんが、いまだに職務質問の光景をみかけます。あれはノルマがあるのだという人もいます。

わたしも以前はしばしばその「餌食」になりました。
いまでこそ歳をとりすぎて相手にされませんが、50歳くらいまでは年に何度かは警察官に「話かけられた」もの。
とにかく混雑している街中でやられるのは困る。地元だと顔見知りもいるだろうし、そうでなくても、通行人に警察官たちに呼び止められ詰問されているとうつるだけで恥かしい。

若い頃は食ってかかることもありましたが、場数を踏むとこちらから通行人の少ない場所に誘導して話を聞いたり、若い警官のプライベートを逆に質問したり。一度急いでいたときなど「急な用事があるので、家まで着いてきていいよ」と煙に巻いたこともありました。

でもここ20年ほどはまったく職務質問してくれない。相手にされないほど歳をとったかと思うと寂しいものです。

経験上、職務質問されやすいタイプというのがあるように思います

キョロキョロと辺りを妙に気にしているとか、あきらかに挙動が不審だという以外では、まず大きめのカバンを持っている人。手提げでも、ショルダーでもリュックでも。つぎにノーネクタイ。背広、Yシャツ、ネクタイのサラリーマン風が職質されているところは見たことが無い。

ほかでは、長髪は短髪よりもされやすい。わかりやすいのは強面もされにくく、見た目穏やかというか人懐っこそうな人のほうがされやすい。
そりゃそうです、警察官だって人の子、仕事とはいえできるだけトラブルにならないで職務質問をまっとうしたいでしょうから。

ですから、職質をされないためには、髪は短髪で整え、スーツにネクタイ、かばんは小さめで薄め、やりすぎにならない程度に眉間にシワをよせ、「話かけるなオーラ」を出しておけば完璧。

まぁ、叩いてもホコリが出なければそんなこと気にする必要はないのですが。
逆に、閑で、友だちが少なく「求む話し相手」の人は、長髪で芸人・森本サイダーのような大きなリュックを背負い、穏やかな表情で歩いていれば「ちょっとすいません」と声を掛けられる可能性大。

職務質問の歌などないと思ってはいけません、これがあるのです。
それが泉谷しげるの「黒いカバン」。70年代はじめの和製フォークで、ヒットはしませんでしたが(圧力で?)話題にはなりました。

https://youtu.be/Z0ZSTmwYsKc

曲は泉谷しげるですが詞は「襟裳岬」や「落陽」などよしだたくろうの歌で知られた岡本おさみ。泉谷のキャラクターで反警察のような歌になってしまいましたが、おそらく岡本おさみの実体験に基づいた歌で、もっと冷静に対応したんじゃないかと思います。

同じフォークでほぼ同年代に岡林信康の「おまわりさんに捧げる唄」がありました。これは職務質問ではありませんが、「黒いカバン」以上に一般には知られていない歌。警察官が権力の僕だとか、税金で生活できているとか、あまりにも内容が抽象的で、言い古された話、たとえるなら酔ったオヤジの「グダ話」のようでほぼ話題にもならなかった。
70年代初頭というのは、こういう一見「反権力」の歌がそれなりにもてはやされる時代ではありました。
同じ時代を反映した歌といっても「黒いカバン」のほうがはるかに完成度が高い。

ほかでは昭和31年(1956)の歌謡曲「若いおまわりさん」(曽根史郎)。

https://youtu.be/9OafJK_hnfo

文字どおり若いお巡りさんが夜公園のベンチでいちゃつくアベック(?)に「こんな時間に治安がよくないからそろそろ帰ったほうがいいですよ」と声をかけるというストーリー。これも職質といえばいえなくもありません。
いまでは考えられません。そもそも大きなお世話ですし、まず同じ光景があったとしても現在の警察官ならば職質どころか声をかけることもないでしょう。時代のなせる話でしょうか。それにしても当時は警察官の見回りはひとりで行動していたのでしょうか。

子供のころ、テレビの歌番組で警察官の制服を着た曽根史郎がよくうたっておりました。拳銃は持っておりませんでしたが(当たり前)、警棒はあったような。とにかく、この歌をテレビで仮装してうたえたということは、警察も黙認(もしかすると推奨していたかも)してたようで、歌の内容もお巡りさんは優しく、非番の日は恋もするんですよ(ナンパしてる)と、イメージアップに貢献しようという歌でした。

その後、あまり職質はもちろん警察官の歌を聞きません。
昭和51年(1976)のピンク・レディーの「ペッパー警部」くらいでしょうか。

ほかではまぁ職務質問といえばいえるのが童謡の「犬のおまわりさん」。
また昭和30年代のテレビ番組では警察ものがいくつかありましたが、主題歌としてなんとなくあったなと覚えているのが「走れ白バイ」。残念ながら曲も詞も脳内蓄音機で再生できません。「いい歌だったな」という印象だけで。YOU-TUBEにもありませんでした。残念。

オマケは今回の話題に6年ほど前に亡くなった岡本おさみが出てきたので、彼のつくった歌を。何の脈絡もなく、ふと聴きたくなるのが彼の歌です。かれが職質を受けている微笑ましい光景を思い浮かべながら聴きたいと思います。

https://youtu.be/IUgqm3m95cU


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