SSブログ

盗作だとか剽窃だとか [歌謡曲]

赤色エレジー.jpg

https://youtu.be/kHvBv7pIx0s

あがた森魚の「赤色エレジー」を聴いていて思い出したことがありました。

現在、ソングライティングは作詞・あがた森魚、作曲・八洲秀章となっています。
しかし当時は詞・曲ともあがた森魚でした。

あがた森魚はシンガーソングライターですから、「春の嵐の夜の手品師」とか「最后のダンス・ステップ」など名曲があります。

作曲者が変ったのは、「赤色エレジー」が20年あまり前の歌謡曲「あざみの歌」に似ているという指摘があり、レコード会社(ベルウッド)が争わず受け入れてそうなったのだとか。

https://youtu.be/TMiQqNTaHBQ

「あざみの歌」は昭和25年伊藤久男でヒットした歌謡曲で、作曲が八洲秀章、作詞は「下町の太陽」や「哀愁列車」を書いたキングのエース・横井弘。
八洲は、やはり伊藤久男の「山のけむり」や辻輝子の「さくら貝の歌」などの抒情的な歌謡曲を得意とした作曲家です。

私の記憶ではひと悶着あったと思ったのですが。あがた森魚はやさしい人だから受け入れてしまったのでしょうね。たしかに歌い出しは似ています。歌い出しがもっとも印象に残るパートで、その意味では不運ともいえます。全篇を聴けば「異曲」という主張がとおりそうな気がします。

詞はその類似性を指摘するのにさほど困難ではありません。たとえば海援隊の「思えば遠くへ来たもんだ」は中原中也の「頑是ない歌」をヒントにつくられていますし。谷村新司の「昴」も啄木の詩との類似性を指摘されました。
しかし、曲は止まっておらず流れているので難しい。「八小節」がほぼ同じなら、という「同曲」の判断があるとかないとか。


かつてその類似性が裁判沙汰になったケースもあります。
服部克久作曲のテレビバラエティの番組テーマ「記念樹」(1992年)が1966年につくられた小林亜星のCMソング「どこまでも行こう」に似ているとして訴えられたもの。
結局最高裁までいって、訴えが認められ、版権をもっていたテレビ局が2000万円あまりの賠償金を小林側のレコード会社に支払った。その後のことはわかりませんが、クレジットを変えて出ていることは考えにくく、「廃盤?」となっているのではないでしょうか。

この2曲については以前ブログで書いた記憶もありますが、わたしにはどちらも「セントルイス・ブルース」をつくったW.C.ハンディの[Loveless Love](Careless Loveとも)に聴こえたものでした。


もうひとつ盗作疑惑の裁判がありました。
昭和38年といいますから、1963年、「女の意地」や「赤坂の夜は更けて」の作詞作曲で知られた鈴木道明の「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」(ザ・ピーナッツほか)がアメリカ映画「ムーラン・ルージュ」の主題歌「夢破れし並木道」を剽窃しているとしてアメリカの音楽会社から訴えられた事件です。
その2曲がこれです。

https://youtu.be/nfclBmrQLA4

https://youtu.be/LAW-BUtTmyc


いつ訴状が出されたのかは不明ですが、やはり最高裁までいき結審は1978年。
こちらは訴えが認められず晴れて「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」はオリジナルとして生き残ることに。
しかし、その影響があったのかどうか、その後鈴木道明の先の2曲や「銀座ブルース」「夏の日の思い出」はラジオからしばしば流れていましたが、「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」はあまり聴かなくなったような気がしました。気のせいかもしれませんが。


もっと古い歌謡曲ですがこの二曲はどうでしょうか。

https://youtu.be/vMD0bfmMFNs

https://youtu.be/ucTzjDhVgr4

「三百六十五夜」(詞・西條八十、曲・古賀政男、歌・霧島昇・松原操)昭和24年と
「月よりの使者」(詞・佐伯孝夫、曲・佐々木俊一、歌竹山逸郎・藤原亮子)昭和23年

かなり似た曲ですが、これは確信犯といいますか、後者の佐々木がプロデュサーから現在ヒット中の「三百六十五夜」のような歌をつくってほしいと依頼され、できあがったのが「月よりの使者」。

ウソかホントか佐々木はレコードが出来上がる前に、一升瓶をもって古賀政男の家を訪れ、「盗作の承諾」を得に行ったとのだか。
佐々木はビクターレコード、古賀政男は当時コロムビアレコード。
レコード会社の異なる作曲家が、それもその時ラジオから流れているような1年前のヒット曲を「拝借」してしまうとは、豪気というか大胆というか。

ほかに「無情の夢」とか「燦めく星座」、「島の娘」、「明日はお立ちか」など戦前戦後にかけて多くのヒット曲をつくった佐々木俊一は奇人だったようで、ほかにも豪傑話にことかかないとか。

しかし、剽窃だ盗作だなどと裁判でお金や時間を費やすことなく、一升瓶ですませてしまえたのは佐々木の人柄もあったのでしょが、そうした「ぬるい」「ゆるい」ある意味「良き時代」のなせるわざだったのかもしれません。いまなら完全にOUTでしょうが。


nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。