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ボビー、俺も男だ [not mellow AB]

ジャニス パール.jpg


いまだに脳内蓄音機でときとして再生される「シティ・オブ・ニューオーリンズ」。

https://youtu.be/RnGJ3KJri1g

列車もいいですが、ニューオーリンズという街の響きががなんとも魅力的です。
ルイジアナ州最大の街はメキシコ湾に面する港町でジャズの発祥地。まぁ雰囲気ありますね。行ったことないけど。

でもそのロケーションから19世紀のはじめ頃より「奴隷貿易」の港の一つとして多くのアフリカ人が連れて来られました。
時代の犯罪といいますか、歴史の犯罪といいますか、人身売買ですから現代では許されないことなのですが、もしこうした「犯罪」が行われなかったとしたら、ジャズをはじめアメリカの音楽はいまほど豊潤にはなっていなかったのでは。皮肉なものです。

とにかくジャズをはじめブルーズ、ゴスペルなど、音楽の都市・ニューオーリンズはしばしば歌にうたわれています。

子どものころ、おそらくはじめて「ニューオーリンズ」という見知らぬ町を歌のなかで聴いたのは60年代初めのころのカヴァーポップス「ルイジアナ・ママ」でした。
♪あの娘はルジアナ・ママ やって来たのはニューオリン

飯田久彦や弘田三枝子がうたっておりました。
ミコさんは♪イカした ルジアナママ 遠いニューオリン でしたが。

https://youtu.be/kUrmxrGvAtw

オリジナルはジーン・ピットニーで歌詞は
♪She's my red hot Louisiana mama
from towan called New Orleans

ほぼ原語どおりです。
アメリカではさほどだったのですが、日本ではヒット。

つぎがビートルズとほぼ時を同じくして日本のヒットチャートにとびこんで来たアニマルズの「朝日のあたる家」House of the rising sun 。

https://youtu.be/0Fy7opKu46c

♪There is a house in New Orleans
 They call the Rising Sun

元はウディ・ガスリィもうたったトラディショナルソング。これもよく聴きました。はじめはもちろんアニマルズ。そしてブラフォー、それからプラターズで、さらにはニーナ・シモンというように。
日本では「朝日楼」というタイトルで浅川マキやちあきなおみがうたっておりました。

さらにはロケンローのバイブル「ジョニー・B・グッド」Jonny B goode

https://youtu.be/aKCt8ssC7cs

♪Deep down in Louisiana close to New Orleans

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でマーティが近過去へタイムスリップして、学園祭で「ジョニー・B・グッド」を演奏すると、級友が電話で「お前が探してたイカした歌があった」といとこに教えてあげる。そのいとこがチャック・ベリーという手の込んだギャグがありました。

このようにいくつもの名曲にうたわれているニューオーリンズですが、「シティ・オブ・ニューオーリンズ」を聴きながら、もう片耳に聴こえてきた「ニューオーリンズ・ソング」はそのいずれでもなく、70年代前半にヒットしたこの曲。

https://youtu.be/vY1j9LbISFA

「ボビー・マギー」Me and Bobby McGee これもあまりにも有名な歌です。

ジャニス・ジョプリンの1971年のアルバム「パール」に収録された一曲。すぐにシングルカットされて、ビルボードのナンバーワンになります。
ただ、ジャニスは前年に亡くなりこの快挙を知りません。(最近こんなはなしばかりです)

「ボビー・マギー」は69年にクリス・クリストファーソンがロジャー・ミラーに書いたカントリーソング。彼自身、デビューアルバム「クリストファーソン」の中でうたっています。もはやジャニスの歌なので、元はカントリーだと知らない人も少なくないようです。

https://youtu.be/D8NsoN4S7IE

旅の途中、くたびれて列車を待っていた時、やはり旅をしていたボビーがヒッチハイクでディーゼル車を停め、私も一緒にニューオリンズへ向かった。と始まる歌。
♪Bobby thumbed a diesel down just before it rained
 Took us all the way to New Orleans

ふたりの旅は楽しかった。自由とはなにも失うことがないってことだとわかった。ふたりは自由だったし、愛し合った。でも、目的が一緒ではなく、ボビーとは別れることになった。本当はずっと一緒にいたいと思ったけど、彼女の目的が叶うのであれば。彼女は「自由」だけを残して去っていった。

という自由を求めてさすらう男と女の物語。もちろんジャニスがうたえばボビーは男だし、クリスがうたえば女になる。
60年代後半から70年代初頭にかけてのヒッピームーヴメントが色濃く反映された名曲です。

自由の端的な象徴として「旅」がうたわれています。
それは50年代のビートニクたちから受け継がれたものであり、さらに遡ること20年、かの大不況時代から仕事を求めて大陸をさすらったホーボーたちのロマンとしての「自由」も引き継いでいるように聴こえます。

1970年前後のアメリカン・ニューシネマにはどこかそうした「さすらい」On the roadのスピリットが感じられました。「イージー・ライダー」「真夜中のカーボーイ」、「スケアクロウ」、「ビリー・ザ・キッド」……。

ペキンパーの「ビリー・ザ・キッド」ではクリス・クリストファーソンがキッド役を演じていました。また、エレン・バーステインが最高の「子持ちさすらいの女」を演じたスコセッシの「アリスの恋」にも善良な恋人役で出ていました。役者としても存在感のあるクリスです。

「ボビー・マギー」といえば、亡くなって久しい小説家の景山民夫に「俺とボビー・マギー」という作品があります。
芸能界を描いた「トラブル・バスターズ」シリーズの第2作で、「ボビー・マギー」とは主人公の相棒ではなく、相(愛)犬でした。彼もきっとこの歌が好きだったんでしょうね。

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